なぜ統合失調症の陽性症状は医療から人を遠ざけるのか|幻聴・被害感を言葉にできない理由を当事者が語る

就職・サービス・治療法について

はじめに

幻聴や被害感、現実が歪むような感覚に襲われているとき、「助けを求めたいはずなのに、なぜか医療が遠く感じる」そんな矛盾した感覚を抱いたことはないでしょうか。本来、医療は支えになるはずの存在です。それなのに、陽性症状のただ中では、診察室が怖く感じたり、うまく話せない自分を責めてしまったりすることがあります。

この記事では、統合失調症の当事者としての実体験をもとに、「なぜ陽性症状のとき、医療が遠く感じられるのか」そして「医療との関係をどう捉え直せるのか」を、丁寧に言葉にしていきます。

陽性症状の中で「助けを求められなくなる理由」

体験そのものが言葉にならない感覚

幻聴や被害感は、単なる「症状」ではなく、その人にとっては圧倒的な現実体験です。音や視線、意味づけが一気に押し寄せ、それを整理して説明する余裕が奪われてしまいます。そもそも、統合失調症の症状を言葉で説明するのは結構難しかったりします。

何というか、漠然としているか、抽象的なので、いざ言葉にしようとするとどう言っていいのかわからないのです。このような理由があるため、症状の言語化が困難のため、助けを求められなくなってしまったりするのかもしれません。

「説明できない=理解されない」という恐れ

言葉にできない体験ほど、「こんなことを言ったら変に思われるのではないか」「信じてもらえないのではないか」という不安が強まります。その恐れが、医療への距離をさらに広げていきます。

これも統合失調症に対する偏見があるからこそだと思います。ですが、統合失調症という病気は、決して珍しいものではなく、100人に1人程度罹患すると言われているので、信じて守らないかもしれないという考えを改め、まずは病院に行くことをオススメします。

診察室で言葉が詰まってしまう心理

診察が「評価される場」に感じてしまう瞬間

診察室は本来、支援の場であるはずです。しかし陽性症状の最中では、「正しく話せているか」「重く見られないか」といった評価の視線を強く感じてしまうことがあります。そもそも、診察で正しく話す必要は全くないと思います。

なぜなら、ある程度漠然としていても、要点さえ押さえておけば伝わるものだからです。相手が外人で英語で伝えなければならないというわけではなく、日本語でいいわけですから、要点だけかいつまんで話せばいいのだと思います。

「正解を言わなければ」というプレッシャー

症状をうまく説明しようとするほど、言葉が整理できず、沈黙や混乱が生まれます。その結果、「やっぱり話せなかった」という体験が残り、医療への不信感につながってしまうこともあります。

いつも話したいことがほとんど話せないという患者さんは、数多くいると思います。そんな時は話したことを箇条書きにしたメモを持参するといいでしょう。こうやってメモを見ながら話せば、ある程度伝えたいことは話せるはずです。

医師の専門言語と当事者の体感のズレ

医学用語が現実感を削いでしまうこと

医師は専門的な言葉で整理しようとします。しかし当事者にとっては、「妄想」「幻聴」というラベルが、体験の重さや恐怖を十分に表していないと感じることがあります。専門的な言葉は便利なのですが、時としてわかりにくさを助長してしまったりします。

ですから、誰でもわかるような言葉で説明してもらうようにするといいでしょう。また、医師に対し萎縮する必要はありません。むしろ逆で、こちらが医師を活用してやる、くらいの心意気を持っておくと良いと思います。

「理解されなかった」という感覚が残る理由

説明はされたけれど、「わかってもらえた感じがしない」そんな違和感が積み重なると、医療そのものが遠い存在に感じられてしまいます。これは難しいところなのですが、自分の言葉が100%相手に伝わるというのはないと思います。

どこかで誤差が生まれるのは仕方ないでしょう。その誤差を少しでも埋めるために、話しておきたい重要な要点だけは押さえておき、それは必ず話すようにすると、自分の考えが間違って伝わるという事態を避けられると思います。

対話をつなぎ直すための視点

比喩や感覚表現が役立つ場面

症状を正確に説明しようとしなくても構いません。「世界が薄い膜で覆われた感じ」「常に背後から見られている感覚」といった感覚的な表現が、対話の糸口になることもあります。たとえ感覚的な表現であっても、十分伝わるのでそれは安心しても大丈夫でしょう。

というよりも大切なのは、感覚的な表現や比喩でも良いので、伝えようと努力する姿勢なのではないでしょうか? 医師もたくさんの患者さんを診て慣れているので、たとえ漠然とした表現であっても、伝えることはできると思います。

医師を「評価者」ではなく「協力者」と捉える

診察はテストではありません。うまく話せなくても、整理できなくても、「一緒に考えていく場」だと捉え直すことで、医療との距離は少しずつ縮まっていきます。そもそも、最初から100%完璧な関係性を求めても難しいでしょう。

本当の信頼関係というのは、日々の診察の中の対話により、少しずつ作り上げていくものなのです。ですから、あまりに完璧な医師を求めてしまうと、恐らくそんな人とは一生出会えません。ある程度は妥協し、信頼を作り上げる方法を探ると良いと思います。

【まとめ】医療は「正解を言う場」ではない

話せない自分を責めなくていい

陽性症状の中で言葉が詰まるのは、弱さではなく、それだけ過酷な体験をしている証拠です。話せなかったこと自体が、失敗ではありません。たとえその日話せなくても、その時の経験を活かして、次は話せるように努力していきましょう。

一気に改善するのは難しかったとしても、メモを取ったりすれば、ある程度要点だけは伝えられるようになります。ですから、少しずつ自分のペースで相手に伝える努力をする必要はあるかと思います。

一緒に考える関係をつくるために

医療との関係は、最初からうまくいかなくても大丈夫です。少しずつ、言葉を探しながら、「協力者としての医療」とつながり直していく。そのプロセス自体が、回復の一部なのだと思います。最初から100%完璧などほとんどないのです。

ですから、ある程度フィーリングが合う、もしくは話しやすいな、と思える医師を探し、その人との対話を通じて、信頼関係を作り上げていきましょう。そして、医師の言いなりになるのではなく、逆に医師を活用するくらいの気持ちを持つようにしてください。

🎥 YouTube動画のご案内

この記事の内容は、実際の体験をもとにしたライブ配信でも詳しくお話ししています。文章とはまた違うニュアンスで語っているので、よろしければあわせてご覧ください。

👉【YouTube動画はこちら

🔹Kindle書籍のご案内

この記事で触れたように、陽性症状の最中は「助けを求めたいのに、うまく言葉にできない」そんなもどかしさを抱えやすい時期でもあります。こうした体験や、回復へ向かう中で見えてきた視点を、もう少し丁寧にまとめたものが、こちらのKindle本です。

『統合失調症の陽性症状と向き合う――医療と当事者の距離を縮める対話の考え方』

➡️ 購入はこちらから

記事と合わせて読むことで、「診察」「リハビリ」「社会との再接続」が、一本の流れとして見えやすくなると思います。

統合失調症の診察についてまとめた記事はこちらも参考にしてください⬇️

\ 最新情報をチェック /

コメント

タイトルとURLをコピーしました