就労継続支援の「A型作業所」「B型作業所」と聞くと、名前は知っていても、
「実際の働き方はどう違うの?」「どんな人に向いているの?」と感じる方も多いのではないでしょうか。
今回は、統合失調症の当事者である僕自身が、実際にA型・B型の両方に通った体験をもとに、リアルな現場の様子と、それぞれの特徴・メリット・デメリットを紹介します。
A型作業所とは? ― 雇用契約で働く“福祉的就労”
雇用契約があり、最低賃金が保障される
A型作業所の最大の特徴は、雇用契約があることです。出勤日や勤務時間が決まっており、基本的に最低賃金が支払われます。最低賃金が保障されるので、首都圏だと1ヶ月で10万円以上の賃金が期待できるでしょう。
僕が通っていたA型では、ライティング・軽作業・事務補助など、事業所ごとに業務内容が異なりました。勤務時間は1日4〜5時間が多く、体調に合わせて無理なく働けるよう配慮されていました。短時間勤務というのは、統合失調症の患者さんでも対応しやすいので、大きなメリットだと感じます。
メリットとデメリット
A型作業所のメリットは、一般就労に近い経験を積めること。勤怠管理・報連相・チーム作業など、実際の職場と同じようなリズムで働けます。事実、A型を一つの訓練場所として捉え、その後一般就労にステップアップした利用者もたくさんいました。
一方で、デメリットはキャリアアップの道が限られている点。一般就労に移行できる人もいますが、長期間働き続ける人も多く、「ステップアップより安定」を重視する傾向があります。A型の仕事は誰にでもできるものが多いため、キャリアになりにくいという点もデメリットだと感じました。
B型作業所とは? ― 創作やリハビリ中心の“自分のペース就労”
自由度が高く、創作活動もできる
B型作業所は、雇用契約がない福祉的作業の場です。創作活動・手芸・清掃・軽作業など、趣味に近い形で活動できるのが特徴です。ストレスが非常に少ないため、療養明けの患者さんでも無理なく始められるでしょう。
私が通っていたB型では、絵を描いたり、商品パッケージを作ったりと、アート活動が中心でした。「働く」というよりも、「自分のペースで通い、社会とつながる」リハビリの場という印象です。実際に私はB型の作業所で漫画を描き、スキルを覚え、今でもその活動を続けています。
メリットとデメリット
B型作業所のメリットは、自由度が高く、体調に合わせやすいこと。週2〜3日の通所でも受け入れてもらえるところが多く、無理なく社会参加できます。私のいたB型作業所では週に1回だけ通うという人もいたので、最初の一歩として有効だと感じました。
デメリットは、工賃(収入)が非常に低いこと。1ヶ月あたり数千円〜1万円台が平均で、生活費としては頼れません。そのため、「働くリズムを取り戻す場所」として利用するのが現実的です。私のいた作業所では、生活保護や障害年金とセットにして生活費にしている人が多かった印象です。
A型とB型の違いを比較 ― 自分に合った選び方
目的の違い ― “働く経験”か“社会参加”か
A型は「一般就労に近い形で働く」、B型は「社会とつながるリハビリの場」。
どちらを選ぶかは、自分の体調・希望・生活リズムによって異なります。
たとえば、
- 週5で働ける体力があり、収入も欲しい → A型
- まだ働く自信がなく、少しずつ慣れたい → B型
というように、目的から逆算して選ぶことが大切です。私も最初はB型に2年ほど通い、その後ステップアップしてA型に通いました。一見遠回りのようにも見えますが、その分着実に成長できると思います。
通って感じた“雰囲気の違い”
僕が経験した3つのA型と2つのB型では、雰囲気もまったく違いました。A型は「仕事場」としての緊張感があり、出勤・報告などのルールがしっかりしています。一方、B型は「居場所」に近く、雑談や創作を通して人とゆるやかにつながる雰囲気でした。
ただA型もB型も就労支援サービスの一つであるので、一般就労に比べるとストレスが少なく働ける環境が整っています。ですから社会復帰の最初に選ぶのは、いい選択肢だと感じます。慣れてきたら一般就労に移るという選択もできるので、まずは始めてみるといいでしょう。
利用前に知っておきたいポイント
見学・体験利用で“相性”を確かめよう
どの作業所にも共通して言えるのは、「見学と体験が大事」ということ。実際に通ってみると、スタッフや利用者の雰囲気が分かり、自分に合うか判断しやすくなります。今の作業所はどこも見学や体験利用を受け付けているので、それに参加して相性を確かめるといいでしょう。
また、体験利用では「1日どんな作業をするのか」「休憩の取り方」など、実際の流れを知ることができます。やはり、実際に体験してから通所した方が、通った後の「こんなはずじゃなかった」というミスマッチを防げると思います。
支援機関との連携も大切
A型・B型作業所は、就労移行支援事業所やハローワーク、相談支援センターと連携することも可能です。特に一般就労を目指す場合は、A型での勤務実績が履歴書に書ける経験として役立つ場合もあります。
A型やB型から一般就労に移る利用者も意外と多くいらっしゃいます。私の通ってきた作業所の利用者も障害者雇用で就職したり、クローズで働き始めたりと、いろんな進路に進んだ方がたくさんいたのです。
【まとめ】“働くリズムを取り戻す”ことが第一歩
A型もB型も、それぞれに役割と価値があります。僕自身にとっては、「働くリズムを取り戻すリハビリ」として、どちらの経験も大切な時間でした。特に生活リズムが整っていない場合、いきなり就労するのは難しいです。だからこそ、A・B型の施設が重要になるのだと思います。
- A型 → 働く経験・安定収入・社会復帰への準備
- B型 → 自由度・安心感・創作や人とのつながり
大切なのは、どちらを選んでも「自分のペースで前に進むこと」。焦らず、無理せず、自分に合った働き方を見つけていきましょう。最初に作業所を選んだとしても、慣れていけば一般就労への道が広がるかもしれません。皆さんも自分のペースで頑張ってくださいね。
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💼 A型・B型作業所で実際に働いた当事者が、リアルな体験を語ります。
就労継続支援の違いや、利用前に知っておきたいポイントを詳しく解説。
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