こんにちは、ウッチーです。
「統合失調症を調べると、よく【ICD-10】って出てくるんだけど、これって何?」
と、こんな疑問を持つ方が多いようです。
結論からお話しすると――。
「【ICD】というのは、WHO(世界保健機関)が作成する病気の分類表」
です。
簡単に言うと、この分類表を使って、医師は統合失調症の診断をしていきます。
今回は、少し難しい内容ですが、「ICD-10」について頑張って解説。
できる限り、わかりやすくまとめるので、ぜひ、最後までお付き合いください。
この記事が、統合失調症と「ICD-10」の関係を調べている方の参考になれば幸いです。
□しっかり抑えて!「ICD-10」って一体何?
ICD-10のICDとは?
統合失調症について、少し勉強しようとすると、「ICD」という単語にぶつかります。
一体、「ICD」とは何なのでしょうか?
まずは、コチラの意味から見ていきましょう。
冒頭でも少し紹介した通り――。
「【ICD】はWHO(世界保健機関)による国際疾病分類」
になります。
国際連盟の専門機関であるWHO(世界保健機関)を知っているでしょうか?
大きな団体なので、何となく聞いたことがあるという方も多いはず。
そしてICDは正式名称を次のように言います。
「疾病及び関連保健問題の国際統計分類」
また、これを英語にすると――。
「International Statistical Classification of Diseases and Related Health Problems」
となります。
同時に、この頭文字をとって、「ICD」と呼んでいるのです。
ICDの主な目的とは?
WHOはどんな目的で「ICD」を作成しているのでしょうか?
この目的はいたってシンプル。
「病因や死因を分類し、その分類をもとにして、統計データをとる」
そして――。
「統計データをもとに、データを体系的に記録し、分析する」
このような作成の目的があるのです。
また、次のような目的もあります。
「統一的な診断概念や診断基準を明確に提示する」
このように、医師が病気を診断するときにも、使われるのです。
特に精神障害はこの傾向が顕著に表れています。
改訂を重ねるにつれて、より一層病気を診断するための側面が増えてきているのです。
医学博士であり、長崎大学の名誉教授の中根允文氏は、次のように言っています。
「ICDは単なる死因の分類にとどまらず、共通の基盤にもとづく臨床診断の必要性が高まっている」
このように病気を診断するための分類、という側面が大きくなっているのです。
ICD-10の「10」って一体何?
では、ICDの後につく「10」という数字は何を意味しているのでしょうか?
コチラの答えは非常にシンプル。
ICD-10の「10」は、版のことを指します。
実は、ICDは1900年に第1版が出版されているのです。
そして、10年ごとに改定されて、1990年にICD-10が出版されました。
但し、医学は絶えず進化しており、変化するのが一般的です。
そのため、ICD-10になってからも、数年おきに部分的に一部改訂が行われています。
ICD-10はICD-11へ
実は、最新のICDの版は「10」ではなく「11」になります。
2018年の6月にICD-11が公表されたのです。
そして、2019年の5月にWHOに総会でICD-11が正式に承認されて、改訂版が生まれました。
ICD-11では、最新の医学的情報が網羅されています。
死亡・疾病などの統計はもちろんですが、臨床現場でも使えるように、多様な病態を表現できるようになっているのです。
□「ICD-10」の内容はどうなっているの?
ICDは病気の分類がされた書物であり、医師の診断の役に立ちます。
ここでは、もう少し深く、ICDについて解説していくので確認しましょう。
ICDは色々な病気を「コード」で分類しています。
これを主に――。
「ICDコード」
と、呼びます。
そして、ICDにはこのコード表がついているのです。
統合失調症をはじめとする、精神疾患は――。
「F00-F99」
に、分類されています。
ここでは、もう少し統合失調症に関するコードを見ていきましょう。
統合失調症はICDではどのような扱いなのでしょうか?
「統合失調症はF20という分類コードが与えられている」
また、F20というコードはさらに細かく分類されています。
例えば――。
- F20.0 妄想型統合失調症
- F20.1 破瓜型統合失調症
- F20.2 緊張型統合失調症
などです。
このように、病気によって異なるコードが与えられ、診断の役に立っています。
統合失調症は一般的な病名です。
ですが、ICDの中には、一般的な病名と違うケースがあります。
つまり、日常的に使われている病名と、ICDに書かれている病名が違う場合があるのです。
例えば、「うつ病」は日常的に使用される言葉ですよね?
しかし、ICD-10の中には「うつ病」と一致するコードはありません。
その代わり、
- 「F32 うつ病エピソード」
- 「F33 反復性うつ病性障害」
などという、ちょっと難解な病名になっているのです。
これらの難点があるため、専門家の間でも日常で使われる病名と、ICDの病名が違うので、議論の対象になっています。
□「ICD-10」が示す統合失調症の診断基準とは?
ICD-10は、医師が病気を診断するときの指標として使われます。
もちろん、ICD-10には統合失調症の分類もあります。
では、ICD-10における統合失調症の診断基準はどのようになっているのでしょうか?
ICD-10の統合失調症の診断基準
(a)考想化声、考想吹入あるいは考想奪取、考想伝播
(b)支配される、影響される、あるいは抵抗できないという妄想で、身体や四肢の運動や特定の思考、行動あるいは感覚に関するものである。それに加えて妄想知覚
(c)患者の行動を実況解説する幻声、患者のことを話し合う幻声。あるいは身体のある部分から聞こえる他のタイプの幻声
(d)宗教的あるいは政治的身分、超人的力や能力などの文化的にそぐわないまったくありえない他のタイプの持続的妄想(たとえば、天候をコントロールできるとか宇宙人と交信しているなど)
(e)どのような種類であれ、持続的な幻覚が、感情症状ではない浮動性や部分的妄想あるいは持続的な支配観念を伴って生じる、あるいは数週間か数カ月間毎日継続的に生じる
(f)思考の流れに途絶や挿入があるために、まとまりのない、あるいは関連性を欠いた話し方になり、言語新作がみられたりする
(g)興奮、常同姿勢あるいはろう屈症、拒絶症、緘黙、および昏迷などの緊張病性行動
(h)著しい無気力、会話の貧困、および情動的反応の鈍麻あるいは状況へのそぐわなさなど、通常社会的引きこもりや社会的能力低下をもたらす「陰性症状」。それは抑うつや向精神薬によるものでないこと
(i)関心喪失、目的欠如、無為、自己没頭、および社会的引きこもりとしてあらわれる、個人的行動のいくつかの側面の質が全般的なに、著明で一貫して変化する
(A)~(i)までの診断基準があります。
そして、統合失調症の診断のために必要になるのは、次の点です。
- 「(a)~(d)のいずれかに属する症状のうち、少なくとも1つの明らかな症状がある(十分に明らかでない場合は2つ以上)」
- 「(e)~(h)の少なくとも2つの症状が1ヶ月以上ほとんどいつも明らかに存在していなければならない」
引用:ICD‐10 精神および行動の障害―臨床記述と診断ガイドラインを参考に編集
医師はこの判断基準をもとにして、患者を診察し、統合失調症の診断をしていきます。
但し、すべての医師がこのようなICDなどを使って、診断していくわけではありません。
実は、ICDが日本に普及し始めてからそれほど年月が経っていないのです。
ですから、従来日本で使われていた、診断基準を使わない伝統的な診断方法を使われるケースも多くなっています。
精神科医を対象にした調査によると、ICDを使って主に診断しているという医師は、全体の10%しかいませんでした。
つまり、日本では伝統的な診断方法が根強く使われており、補助的な役割でICDが使われるようです。
□「ICD-10」って私たちの生活に関係あるの?
ここまで「ICD」について説明してきました。
では、統合失調症の当事者である私たちに、ICD-10は関係があるのでしょうか?
主に私たちが診断を受ける以外に「ICD」が必要になるのは次のような時です。
- 医師が各種診断書を書くため「ICDコード」を利用する時
- 統合失調症の勉強のために専門的な書物を読んでみようと思った時
以上の点です。
1つずつ見ていきましょう。
「ICD」と私たちの関係① 診断書
これは、主に医師の書く診断書に影響してきます。
私たちがICDコードを必要とするのは、次のような時です。
- 障害年金の診断書
- 障害者手帳の診断書
- 民間の保険会社に提出する診断書
など、ICDのコードを使用する時があります。
医師が書く書類にはなるのですが、このようなコードが使われるケースがあると覚えておくといいでしょう。
「ICD」と私たちの関係① 勉強
統合失調症の勉強をする時、色々調べると思います。
そんな時、統合失調症をはじめとする疾病の専門書である「ICD」は役に立ちます。
とはいっても、この原本を読むのは非常に難解です。
ですので、一般向けにわかりやすく解説された書籍がオススメ。
中でも――。
「ICD‐10 精神および行動の障害―臨床記述と診断ガイドライン」
という書籍は、ICDの中から精神障害を割り出してまとめてあるので理解が進みます。
ウッチーには少し難しかったですが、結構勉強になりました。
例えば――。
- 統合失調症の診断基準
- 統合失調症の関連用語
統合失調症の関する情報もたくさんあるので、読んでみると色々勉強になります。

ウッチーは認知機能の障害により、難しい本はほとんど読めません。
ですが、診断基準や関連用語などは、何とか読めました。
ですので、難しいから無理! と、考えるのはもったいないです。
リンクを貼っておきますので、興味がある方はぜひ参考にしてみてください。
ICD‐10 精神および行動の障害―臨床記述と診断ガイドライン
□もう1つの診断基準の書「DSM」との違いは?
実は、統合失調症を診断する時に、「ICD」ではない、別の書籍を利用することもあります。
それが――。
「DSM-5」
と、いう書籍です。
これは、アメリカの精神医学会が出版している、精神医学に特化した診断基準になります。
「DSM-5」の「5」というのは第5版ということです。
では、「ICD」と「DSM」の違いはどんな点でしょうか?
- 作成機関が違う
- 分類範囲が違う
- 行政での使われ方が違う
以上3つの違いがあります。
1つずつ見ていきましょう。
「ICD」と「DSM」の違い① 作成機関が違う
ICDはWHO(世界保健機関)が作成しています。
これに対し、DSMはアメリカの精神医学会が作成しています。
つまり、作成機関が全く違うのです。
「ICD」と「DSM」の違い② 分類範囲が違う
ICDは身体疾病を含むすべての疾患を分類しています。
これに対し、DSMは精神障害のみを対象にして分類しています。
分類範囲もまったく違うのです。
「ICD」と「DSM」の違い③ 行政での使われ方が違う
日本の行政で使用されているのは、ICDです。
そのため、DSMのコードは、日本の行政では使わないので注意しましょう。
日本の行政で必要になるコードは、ICDのコードになります。
これらの違いがあります。
あわせて参考にしてみてください。
「DSM-5」についてはコチラの記事で詳しく解説しています↓
□統合失調症の診断にも使われる「ICD-10」を理解しよう
今回は、統合失調症を診断として使われる「ICD-10」を解説しました。
統合失調症について勉強していると、結構出てくる単語なので、気になっている方も多いでしょう。
なかなか難しい内容でしたが、ウッチーなりにわかりやすくまとめたつもりです。
WHOが作成した病気の分類表であり、統合失調症の診断基準もまとめられています。
すべての医師が、ICDを使うわけではないようですが、知っておくと色々勉強になります。
最後に、本記事で紹介した内容を振り返っていきます。
- 「ICD-10」って一体何?
- 「ICD-10」の内容はどうなっているの?
- 「ICD-10」が示す統合失調症の診断基準とは?
- 「ICD-10」って私たちの生活に関係あるの?
- もう1つの診断基準の書「DSM」との違いは?
以上5つの内容でお届けしました。
本記事を書くために、「ICD‐10 精神および行動の障害―臨床記述と診断ガイドライン」という書籍を参考にしました。
難しい本ですが、統合失調症に関する情報も多いので、何かと勉強になります。
気になる方は、コチラをチェックしてみてください↓
ICD‐10 精神および行動の障害―臨床記述と診断ガイドライン
この記事が、統合失調症と「ICD-10」について調べている方の参考になれば幸いです。
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